フリーランスの入金を見通す|KASEGU · 第03回 / 全10回
源泉徴収で手取りはいくら減るか
この記事の要点
- 源泉徴収の税率は支払金額100万円以下の部分が10.21%、100万円を超える部分が20.42%(1円未満切り捨て)。
- 請求書で報酬額と消費税額を明確に区分して書けば、消費税を除いた報酬額だけを源泉徴収の対象にできる。
- 税抜10万円・消費税1万円の仕事なら、区分ありは10,210円、区分なしは11,231円。1件あたり1,021円の差になる。
前回は、締め日と支払日から入金日を逆算しました。日付は決まります。ただし、請求した金額がそのまま振り込まれるとは限りません。

たとえば、11万円で請求した仕事の入金を確認すると、98,790円しか入っていません。差額は11,210円。自分の請求が間違っていたのか、先方が計算を誤ったのか判断できません。確認の連絡をするほどの額でもない気がして、そのままにします。数か月後、帳簿の金額が合わなくなります。
この差額は源泉徴収税です。請求書の書き方によって対象になる金額が変わり、事前に1円まで計算できます。この記事を読み終えると、直近の請求について手取り額を計算し、実際の振込額と一致させられるようになります。
差し引かれているのは、前払いした所得税
源泉徴収は、支払う側が報酬から所得税を差し引いて、代わりに国へ納める制度です。受け取る側の税負担が増えるわけではありません。確定申告のときに、その年の所得税を計算して、すでに納めた分を差し引きます。多く納めていれば還付されます。
つまり、手取りが減っているのではなく、税金の一部を先に払っている状態です。ただし手元の資金は確実に減るので、資金繰りの計算には差し引き後の金額を使います。
税率は2段階です。
- 支払金額が100万円以下の部分 — 10.21%
- 100万円を超える部分 — 20.42%
1円未満は切り捨てます。100万円を超える場合は「(支払金額 − 100万円)× 20.42% + 102,100円」で計算します。
消費税を分けて書くかで、対象額が変わる
ここが分かれ目です。請求書で報酬額と消費税額を明確に区分して書いていれば、消費税を除いた報酬額のみを源泉徴収の対象にできます。区分していない場合は、税込額が対象になります。

税抜10万円・消費税1万円の仕事で比べます。
- 区分して書いた場合 — 10万円 × 10.21% = 10,210円が引かれ、振込額は99,790円。
- 区分せず「110,000円」とだけ書いた場合 — 11万円 × 10.21% = 11,231円が引かれ、振込額は98,769円。
差は1,021円です。1件では小さく見えますが、毎月続けば年間で1万円を超えます。請求書に「小計」「消費税」「合計」の3行を書くだけで済むので、区分する書き方を標準にします。
冒頭の例(11万円の請求に対して98,790円の振込)は、区分せずに税込11万円へ課税されたケースに近い金額です。自分の請求書がどちらの書き方になっているか、まず確認してみてください。
自分の報酬が対象かを判定する
源泉徴収の対象になるかは、報酬の名目ではなく実態で決まります。「謝金」「取材費」といった名前でも、実態が原稿料や講演料と同じであれば対象です。
対象になりやすいのは、原稿料、デザイン料、講演料、翻訳料、通訳料、技術指導料などです。一方、1人あたり5万円以下の賞金や投稿の謝金は対象外とされています。
また、受け取る側が法人の場合は原則として対象外です。個人事業主として受け取っているか、法人として受け取っているかで扱いが変わります。
判断に迷う場合は、後述の相談先へ確認してください。この記事では、対象だった場合にいくら引かれるかを計算できるところまでを扱います。
計算してみる
税抜額を A として計算します。
A = 10万円のとき 100,000 × 0.1021 = 10,210円 → 手取り(消費税込みの振込額)は 110,000 − 10,210 = 99,790円
A = 50万円のとき 500,000 × 0.1021 = 51,050円 → 振込額は 550,000 − 51,050 = 498,950円
A = 150万円のとき 100万円までの分: 1,000,000 × 0.1021 = 102,100円 100万円を超える分: 500,000 × 0.2042 = 102,100円 合計 204,200円 → 振込額は 1,650,000 − 204,200 = 1,445,800円
計算式さえ分かれば、請求書を作る時点で振込額が出ます。入金予定表には、この差し引き後の金額を書きます。
毎回計算するか、書類と同じ場所で出すか
- 電卓で足りる — 源泉徴収される取引が月に1件程度。
- 表計算に式を入れる — 毎月複数件あり、金額が案件ごとに違う。
- 請求書と同じ場所で出す — 案件ごとに源泉の有無が違い、請求のたびに手取りを確認している。
3つ目に当てはまる場合、請求書を作った後に別の場所で計算し直しています。請求額と源泉税額と手取りは同じ書類から出る数字なので、本来は1度で済むはずです。
請求書を作ると同時に手取りが出る選択肢
ここまでの計算は、アプリがなくてもできます。道具で減るのは、書類を作った後にもう一度電卓を叩く手間です。
案件ごとに源泉徴収の有無を設定しておけば、請求書を作った時点で税額と差引請求額まで出ます。

請求書の詳細画面です。明細の下に金額のまとまりがあり、小計・消費税・合計(税込)と続いた後に、源泉徴収税額と差引請求額が入ります。この記事で計算してきた順序と同じ並びです。

小計50万円に対して源泉徴収税額が51,050円、差引請求額が498,950円です。この記事の計算例(50万円 × 10.21% = 51,050円)と同じ数字になっています。消費税5万円は源泉徴収の対象に入っていません。
ただし、源泉徴収の対象かどうかを判定するのは利用者側です。報酬の種類から自動で判断する仕組みではないため、案件ごとに設定する必要があります。判定そのものは、この記事の内容が引き続き必要です。
この方法が向かない場合
源泉徴収の要否と税率は、報酬の種類と支払者の区分で変わります。この記事の計算は、対象になる報酬を個人が受け取る一般的なケースの説明です。自分の取引が対象になるか判断できない場合は、税理士または所轄の税務署へ確認してください。
差し引かれた税額は、確定申告で精算します。年間の記帳と申告は別に必要で、この記事の計算だけでは完結しません。会計ソフトや税理士と組み合わせて使ってください。
支払調書が届かない場合もあります。支払調書の交付は義務ではないため、届かないことを前提に、自分の請求書と入金記録から年間の源泉徴収額を集計できるようにしておきます。
今日、1件だけ確かめる
直近で入金があった請求を1件選んでください。請求書の税抜額に10.21%をかけて、合計額から引きます。その数字が、実際の振込額と一致するか確かめます。
一致すれば、差額の正体は分かったことになります。一致しなければ、請求書で消費税を区分していたかを確認します。そこまでで今日は終わりです。
KASEGU について
KASEGU は、案件ごとに見積書・納品書・請求書を作り、その書類の状態から来月の入金予定が決まる iPhone / iPad 向けのアプリです。クライアントに登録した支払条件から入金予定日が入り、源泉徴収後の受取額で月別に集計されます。クライアント3件・案件10件・書類20件までは無料で使えます。
本記事は、フリーランスが自分の入金を見通すための実務手順を扱うものです。源泉徴収の要否と税率、インボイス制度の要件、支払期日に関する法令の適用は、報酬の種類・支払者の区分・取引の当事者によって変わります。個別の判断は税理士または所轄の税務署へご確認ください。支払いの遅延で困っている場合は、フリーランス・トラブル110番や公正取引委員会の相談窓口が利用できます。KASEGU は記帳・決算・確定申告を行う会計ソフトではありません。