フリーランスの入金を見通す|KASEGU · 第06回 / 全10回
働いた時間を請求の根拠にする記録粒度
この記事の要点
- 請求の根拠として通用する記録は、案件・作業種別・時間の3項目で足りる。
- 記録するのは作業の終わりに1回だけ。開始と終了の2回にすると、片方を必ず忘れる。
- 準委任契約では稼働時間が対価の直接の根拠になり、請負契約でも追加作業を請求する際の説明材料になる。
前回は、案件ごとの入金を並べる予定表を作りました。その表に書く「請求額」は、何を根拠に決めているでしょうか。時間単価で働く場合、根拠になるのは稼働時間です。

たとえば、準委任契約の案件で、月末の稼働報告を求められます。開始と終了の時刻はメモしてあります。ところが「何にどれだけ使ったか」の内訳を聞かれ、答えられません。実装だけでなく、調査や打ち合わせにも時間を使っていますが、区別して記録していないためです。追加で発生した調査の分は、説明できないまま請求を諦めることになります。
根拠として通用する記録は、3項目で足ります。細かさより、案件と作業の種別が後から言えることが条件です。この記事を読み終えると、1週間の記録から案件別の合計と、その内訳を示せるようになります。
契約形態で、時間記録の意味が変わる
準委任契約は、成果物ではなく業務の遂行そのものを引き受ける契約です。稼働した時間が対価の根拠になるため、記録は請求の直接の裏づけになります。
請負契約は、成果物を納めることを引き受ける契約です。時間そのものは対価に直結しません。ただし、見積が妥当だったかの検証や、追加作業を請求する際の説明材料として使えます。「当初の想定に含まれない調査に8時間かかった」と示せるかどうかで、交渉の余地が変わります。
どちらの契約でも、必要な記録は同じです。案件・作業種別・時間の3つが揃っていれば説明できます。

記録先は3種類に分かれます。案件が決まっているもの、クライアントは決まっているが案件が未確定のもの(相談や打ち合わせ)、そして請求しない自分の作業(営業、経理、自己研鑽)です。3つ目を同じ場所に記録しておくと、「請求できる時間」と「そうでない時間」の比率が分かります。
3項目に限定する
1. 案件 — どの仕事に使ったか。クライアントだけ決まっている場合はクライアント名、請求しない作業は「営業」「経理」などのラベルにします。
2. 作業種別 — 何をしたか。最初は5つ以内から始めます。設計・実装・打合せ・調査・修正、といった粒度で十分です。増やすのは、実際に区別して報告を求められたときだけにします。
3. 時間 — どれだけ使ったか。単位は15分または6分に決めます。決めたら変えません。単位を変えると、過去の記録と合計が比較できなくなります。
これ以上は増やしません。作業の詳細な内容や、使ったツール、進捗率は、記録の負担になる割に請求の根拠としては使われません。必要になったときに、後から項目を足せます。
記録するタイミングを1つに固定する
作業を始めるときと終わるときの2回記録しようとすると、片方を忘れます。作業の終わりに1回だけ記録する形にします。
「9:00に開始、12:00に終了」ではなく、「実装 3.0時間」と残します。開始終了の時刻は、後から報告で求められたときに困らない程度に、記憶が新しいうちに補えば足ります。
厳密な打刻ではなく、合計が説明できる粒度を目指します。3.0時間と3.2時間の違いを追いかけるより、「調査に何時間使ったか」を答えられるほうが、請求の場面では役に立ちます。
メモ帳・表計算・記録から請求へ
- メモ帳で足りる — 時間単価の案件が1つで、報告も月1回。
- 表計算にする — 複数案件を並行しており、案件別の集計が必要。
- 記録から請求へつなげる — 記録した時間をそのまま請求の内訳として提出している。案件の情報と時間の記録を、別々の場所で管理している。
3つ目に当てはまる場合、集計のたびに案件名を突き合わせています。記録の時点で案件に紐づいていれば、その作業は不要になります。
記録と案件が同じ場所にある選択肢
ここまでの方法は、アプリがなくても実行できます。道具で減るのは、記録を案件に対応づけ直す手間です。
KASEGUでは、時間を記録するときに案件・クライアント・内部作業ラベルのいずれかへ紐づけます。月のカレンダーで記録した日が一覧でき、月末には案件別の集計が出ます。


クライアント単位で工数レポート(PDF / CSV)を出力できるので、稼働報告の資料として提出できます。レポートは1クライアント分だけを含む作りになっており、他社の情報が混ざりません。
ただし、時間×単価から請求書の明細を自動で作る機能はありません。記録は請求の根拠資料であって、請求額そのものは自分で決めます。開始・停止を押して計測するタイマーもありません。作業が終わったときに時間を入力する形です。
この方法が向かない場合
完全な成果物単位の請負で、時間の申告を求められないなら、記録は不要です。見積の精度を上げたい場合にだけ、自分用に取る意味があります。
チーム全員の工数を集計したい場合、個人用の記録では足りません。メンバー間で共有できる工数管理の専用ツールが向きます。
労働時間の法的な管理(勤怠管理)とは目的が違います。雇用契約に基づく労働時間の記録には使わないでください。
今日から1週間だけ記録する
完璧な記録を続けようとすると、3日で止まります。まず1週間と決めてください。
作業が終わるたびに、案件名・作業種別・時間の3つを書きます。紙でもメモアプリでも構いません。1週間後、案件別に合計します。
そのとき、「調査にこれだけ使っていた」と気づく項目が出てきたら、それが次に請求で説明すべき内容です。
KASEGU について
KASEGU は、案件ごとに見積書・納品書・請求書を作り、その書類の状態から来月の入金予定が決まる iPhone / iPad 向けのアプリです。クライアントに登録した支払条件から入金予定日が入り、源泉徴収後の受取額で月別に集計されます。クライアント3件・案件10件・書類20件までは無料で使えます。
本記事は、フリーランスが自分の入金を見通すための実務手順を扱うものです。源泉徴収の要否と税率、インボイス制度の要件、支払期日に関する法令の適用は、報酬の種類・支払者の区分・取引の当事者によって変わります。個別の判断は税理士または所轄の税務署へご確認ください。支払いの遅延で困っている場合は、フリーランス・トラブル110番や公正取引委員会の相談窓口が利用できます。KASEGU は記帳・決算・確定申告を行う会計ソフトではありません。