フリーランスの入金を見通す|KASEGU · 第05回 / 全10回
案件が増えても崩れない入金予定表の作り方
この記事の要点
- 予定表が続かなくなる原因は列の多さと更新タイミングの曖昧さで、対策は列を減らすより先に更新回数を減らすこと。
- 列は案件名・クライアント・請求額・源泉徴収額・手取り・請求日・入金予定日・状態の8項目に絞る。
- 更新は請求書を送ったときと入金を確認したときの2回だけ。合計するのは状態が「請求済み」の行の手取りのみ。
前回までで、1件の案件について入金日・手取り・請求の状態が出せるようになりました。案件が1件なら、それで足ります。増えると、並べて全体を見る場所が必要になります。

たとえば、案件が6件になった月に、合計を出そうとして30分かかります。以前に予定表を作ったこともあります。列を15個作り、備考欄まで用意して、2か月で更新をやめています。結局また記憶に頼り、入金済みの案件へ督促のメールを送りかけます。
続く予定表は、列が少ないものです。8項目と、更新するタイミングを2回に固定すれば維持できます。この記事を読み終えると、進行中の案件を全件入れた予定表ができ、来月の合計が金額で出せます。
予定表が続かなくなる理由は2つ
1つ目は、列が多すぎることです。 1件を入力するのに1分以上かかると、案件が増えたときに手が止まります。備考、担当者名、案件の詳細、進捗率。あると便利に見える列が、更新の負担になります。
2つ目は、更新するタイミングが決まっていないことです。 「気づいたとき」に更新する運用は、忙しい月に必ず飛びます。1か月飛ぶと、次に開いたときの作業量が2倍になり、そのまま放置されます。
対策は、列を減らすことより先に、更新の回数を減らすことです。何かが起きるたびに触るのではなく、決まった出来事のときだけ触る形にします。
8項目に絞る
必要なのは次の8つです。

- 案件名 — 自分が分かる名前で構いません。
- クライアント — 支払条件は相手ごとに決まるため、必ず分けます。
- 請求額(税抜) — 消費税を含めない金額。源泉徴収の計算に使います。
- 源泉徴収額 — 対象外なら0と書きます。空欄にしないのは、判定済みであることを示すためです。
- 手取り — 実際に振り込まれる金額。合計するのはこの列です。
- 請求日 — 請求書を送った日。予定日ではありません。
- 入金予定日 — 請求日と支払条件から計算した日付。
- 状態 — 未請求 / 請求済み / 入金済み の3つだけ。
これ以上増やしません。担当者名や案件の詳細は、請求書や見積書に書いてあります。予定表は「いつ・いくら入るか」に答えるための表で、案件の管理台帳ではありません。
状態を3つに絞るのも同じ理由です。「検収待ち」「送付準備中」といった中間状態を作ると、更新のたびに判断が必要になります。判断が必要な列は、更新が止まる原因になります。
更新は2回だけ
請求書を送ったとき — 請求日を書き、状態を「請求済み」に変えます。入金予定日を計算して入れます。
入金を確認したとき — 状態を「入金済み」に変えます。金額が予定と違えば、その場で理由を確認します(源泉徴収の差か、振込手数料の負担か)。
この2回以外は開きません。案件が始まったとき、納品したときには触らないでください。触る回数を増やすほど、続かなくなります。
未請求の案件を予定表に入れておく必要もありません。請求書を送った時点で初めて行を作れば、入力は月に数回で済みます。
合計するのは「請求済み」の行だけ
来月の入金を知りたいときは、入金予定日が来月で、状態が「請求済み」の行の手取りを足します。
「未請求」の行は足しません。まだ請求していない金額を見込みに入れると、実態より大きく見えます。これは、このシリーズの最初に扱った4つの関門と同じ考え方です。請求より手前の案件は、金額が確定していません。
「入金済み」も足しません。すでに入った分は、来月の見込みではないためです。
手で更新するか、書類側で集計するか
- 紙で足りる — 案件が3件以下。月に1回書き直しても負担にならない。
- 表計算に移す — 案件が5件前後。過去の月と比べたい、経費と合わせて資金繰りを見たい。
- 書類側で自動集計する — 案件が増えて、表の更新自体が仕事になっている。請求書を作った後に、同じ数字を予定表へ書き写している。
3つ目に当てはまる場合、8項目のうち7項目は請求書を作った時点ですでに確定しています。案件名、クライアント、請求額、源泉徴収額、手取り、請求日、入金予定日。書き写す作業だけが残っている状態です。
転記をなくす選択肢
ここまでの方法は、アプリがなくても実行できます。道具で減るのは、請求書から予定表へ数字を書き写す手間です。
請求書を作る場所と集計する場所が同じなら、転記は発生しません。KASEGUの場合、ホーム画面に月別の入金予定が並びます。

画面を開いてすぐの位置に入金予定があります。8項目の予定表でいえば「入金予定日」と「手取り」を月ごとに集計した結果に当たります。

表計算で「入金予定日が来月で、状態が請求済みの行の手取りを足す」とした作業が、書類の状態から自動で出ています。予定表に転記する行は残っていません。
ただし、集計に入るのは送付済み・期限超過・一部入金の請求書だけです。下書きのままの請求書は含まれません。金額は源泉徴収後の受取額で計算されます。この2点は、手作業の予定表で「請求済みの行だけを足す」「手取りの列を足す」としたルールと同じです。
この方法が向かない場合
自動集計が働くのは、請求書をその場所で作っている場合だけです。他のツールで請求書を作っているなら、どこかで転記が必要になります。書類の作成場所を変えるかどうかから検討することになります。
過去の月との比較や、経費を含めた資金繰り表が必要なら、表計算や会計ソフトのほうが向きます。入金予定は「これから入るお金」だけを扱うため、支出と合わせた収支計画には足りません。
案件が3件以下なら、8項目の表を作る手間のほうが大きくなります。紙のままで構いません。
今日、8項目の表を作る
紙でも表計算でも構いません。8つの見出しを書いてください。
そのうえで、いま請求済みで入金待ちの案件を全部入れます。未請求の案件は入れません。入れ終わったら、入金予定日が来月の行の手取りを足します。
その数字が、来月入る予定の金額です。
KASEGU について
KASEGU は、案件ごとに見積書・納品書・請求書を作り、その書類の状態から来月の入金予定が決まる iPhone / iPad 向けのアプリです。クライアントに登録した支払条件から入金予定日が入り、源泉徴収後の受取額で月別に集計されます。クライアント3件・案件10件・書類20件までは無料で使えます。
本記事は、フリーランスが自分の入金を見通すための実務手順を扱うものです。源泉徴収の要否と税率、インボイス制度の要件、支払期日に関する法令の適用は、報酬の種類・支払者の区分・取引の当事者によって変わります。個別の判断は税理士または所轄の税務署へご確認ください。支払いの遅延で困っている場合は、フリーランス・トラブル110番や公正取引委員会の相談窓口が利用できます。KASEGU は記帳・決算・確定申告を行う会計ソフトではありません。