フリーランスの入金を見通す|KASEGU · 第08回 / 全10回
入金の見通しを立てる道具の選び方
この記事の要点
- 選ぶ基準は機能の数ではなく更新が続くかどうかで、案件数・書類を自分で作るか・記帳を含めるかの3つの質問で候補は1つに絞れる。
- 進行中の案件が月3件以下なら専用の道具は要らず、紙か表計算で足りる。
- 手段は紙・表計算・請求書作成サービス・会計ソフト・案件管理アプリの5つで、それぞれに向かない条件がある。
ここまでの記事で、入金日の逆算、手取りの計算、請求の出し忘れを止める運用、全案件の予定表、時間の記録、取消への対応を扱ってきました。方法は決まりました。次は、それを何で続けるかです。

たとえば、月末に表計算を開くと、前回の更新が3か月前です。案件は増えています。会計ソフトを契約すべきか、請求書アプリで足りるのか。比較記事を読んでも機能表が並ぶだけで、自分の場合どれなのかは書かれていません。決められないまま半年が過ぎ、その間ずっと勘で資金繰りをすることになります。
選ぶ基準は、機能の数ではありません。更新が続くかです。3つの質問に答えると、候補は1つに絞れます。この記事を読み終えると、自分が使う手段を決められます。
なぜ機能比較では決まらないのか
比較記事は「何ができるか」を並べます。読者が知りたいのは「自分の場合どれか」です。この2つは別の問いで、前者をいくら詳しく読んでも後者には答えられません。
実際に選択を変えるのは、次の3点だけです。案件が何件あるか、書類を自分で作るか、記帳まで含めるか。それ以外の機能差は、あれば便利ですが、どれを選ぶかは変えません。
なお、この記事では特定の製品名を出さずに、カテゴリで比較します。製品ごとの機能や料金は変わるため、カテゴリで判断してから、その中で製品を比べるほうが確実です。
3つの質問

質問1: 進行中の案件は月に何件ですか。 3件以下なら、専用の道具は不要です。紙か表計算で足ります。4件以上なら、質問2へ進みます。
質問2: 見積書・納品書・請求書を自分で作りますか。 作らない(相手が発注書を出し、支払通知だけ届く形)なら、表計算で十分です。作るなら、質問3へ進みます。
質問3: 記帳と確定申告も同じ場所で済ませたいですか。 はいなら、請求書機能を含む会計ソフトが向きます。いいえ(記帳は別で行う、または税理士に任せている)なら、書類作成と入金管理に絞った道具が向きます。
手段ごとの向き・不向き
紙・手帳
向く条件 — 案件が3件以下。書き直しが月1回で済む。パソコンやスマートフォンを開かずに確認したい。
向かない条件 — 案件が増えて書き直しが追いつかない。過去の月と比べたい。金額の合計を頻繁に出す。
費用はかかりません。続けやすさは最も高い一方、集計は手計算になります。
表計算
向く条件 — 案件が5件前後。過去の月と比べたい。経費や他の集計と組み合わせたい。自分で列を設計したい。
向かない条件 — 書類(請求書など)も作る必要があり、同じ数字を2か所へ書いている。入力する項目が増えて更新が止まりがち。
無料で始められ、自由度が最も高い手段です。ただし、書類を別で作っている場合は転記が発生します。
請求書作成サービス
向く条件 — 書類の作成と送付が主な目的。取引先が多く、書類の体裁を整える手間を減らしたい。
向かない条件 — 案件の進み方(見積から入金まで)を追いたい。書類を作らない取引が多い。
書類作成に特化しているため、その用途では効率が高くなります。一方、案件の状態や入金予定の管理は範囲外のことが多く、別の場所で持つことになります。
会計ソフト
向く条件 — 記帳・決算・確定申告まで1つで済ませたい。経費も含めた資金繰りを見たい。売上以外の取引が多い。
向かない条件 — 記帳は税理士に任せており、自分は請求と入金だけ管理したい。会計の用語や仕訳の考え方に慣れていない。
最も守備範囲が広い手段です。その分、入金予定を見るだけの用途には機能が多く、日常的に開く画面としては重くなることがあります。
案件管理アプリ
向く条件 — 案件ごとに見積・納品・請求を作り、その状態から入金予定を見たい。書類と入金を同じ場所で持ちたい。
向かない条件 — 記帳まで1つで済ませたい。チームで共有したい。書類を作らない取引が中心。
書類作成と入金管理を1か所にまとめる手段です。記帳は別の道具か税理士へ渡す前提になります。
3つの質問で「案件管理アプリ」に着地した場合
質問1が4件以上、質問2が「作る」、質問3が「いいえ」の経路に来た読者へ。この経路では、書類の状態がそのまま入金予定の入力になる作りが向きます。同じ数字を2か所に書く作業がなくなるためです。
KASEGUはその一例です。このシリーズで扱ってきた方法(入金日の逆算、源泉徴収後の手取り、未請求の検出、月別の入金予定、工数の記録、取消の対応)が、書類を作る流れの中に組み込まれています。iPhone・iPadで動き、記帳は会計ソフトへCSVで渡す前提の設計です。
同じカテゴリには他のアプリもあります。カテゴリを決めた後は、無料で使える範囲で試して、自分の案件で更新が続くかを確かめてください。続かなければ、機能がいくら多くても意味がありません。
3つの質問で決まらない場合
複数のカテゴリにまたがる要件がある場合(書類も作りたいが記帳も1つで済ませたい、など)は、無理に1つへまとめず、2つを併用します。よくある組み合わせは「書類と入金は専用の道具、記帳は会計ソフト」です。
チームで共有したい場合、この記事の手段はどれも個人利用を前提としています。共有が要件なら、それを満たすものから先に絞ります。
iPhone・iPad以外を使っている場合、選べる範囲が変わります。WebブラウザやAndroidで動くかどうかを、機能より先に確認してください。
乗り換えのコストも判断材料です。過去のデータを移せるか、慣れ直しにどれだけかかるかを見積もります。年度の途中で変えるより、区切りに合わせるほうが混乱が少なくなります。
今日、1つ決める
3つの質問に答えてください。案件数、書類を作るか、記帳を含めるか。それだけで着地点は決まります。
決めたら、無料で試せる範囲で1か月使ってみてください。判断するのは機能の多さではなく、月末に開いたときに更新が終わっているかどうかです。
KASEGU について
KASEGU は、案件ごとに見積書・納品書・請求書を作り、その書類の状態から来月の入金予定が決まる iPhone / iPad 向けのアプリです。クライアントに登録した支払条件から入金予定日が入り、源泉徴収後の受取額で月別に集計されます。クライアント3件・案件10件・書類20件までは無料で使えます。
本記事は、フリーランスが自分の入金を見通すための実務手順を扱うものです。源泉徴収の要否と税率、インボイス制度の要件、支払期日に関する法令の適用は、報酬の種類・支払者の区分・取引の当事者によって変わります。個別の判断は税理士または所轄の税務署へご確認ください。支払いの遅延で困っている場合は、フリーランス・トラブル110番や公正取引委員会の相談窓口が利用できます。KASEGU は記帳・決算・確定申告を行う会計ソフトではありません。